< 彫刻の技法について >
立体を彫る「丸彫り」の他に、壁掛けのように平面に近いものを彫る場合は、同じ図案で彫るとしてもいくつかの技法があり、それぞれのやり方で大きく印象が変わります。
ここでは丸彫り、透かし彫り、線彫り、肉合彫り(ししあいぼり)、薄肉彫り(レリーフ)、片切り彫りを紹介します。
< 丸彫り >
立体でそのものを彫り、彫刻刀や仕上げ鑿などの小道具を使ってなめらかに仕上げます。
よくヤスリは使うのかということを質問されますが、紙ヤスリを使うのは塗りの下地作りのなどの際で、基本的には使いません。刃物を切らすことで光沢が出ます。
< 透かし彫り >
板の地部分を透かして図、文様を彫り込む技法です。透かし方には二種類あり、文様部分を残して地を抜く「地透かし」と、地板に直接文様を抜く「文様透かし」です。文様透かしは欄間などにも見られますが、彫刻では地透かしが主です。
< 線彫り >
結婚祝いの贈り物として彫った「 柏にフクロウ 」
< 肉合い彫り (ししあいぼり) >
肉合い彫りは輪郭を沈めて、その中で薄肉彫りで表現するやり方です。
平らな地板に、図、文様の周りを深く彫り下げて中の部分を彫り込みます。浮き彫りに似た効果がありますが、文様が地よりも高くならないところに特徴があります。
< 薄肉彫り、レリーフ >
いわゆる浮き彫りと言われる技法です。レリーフでも、ごく薄い板に彫刻するものと厚い板に彫刻し立体に近い程に浮き出させるものがあります。図のまわりの地を下げたり、全体的に薄肉彫りで仕上げることもあります。
< 片切り彫り >
片切り彫りは金工で言う技法です。彫刻で言うとノミにあたる「タガネ」という刃物、道具と金槌を使い、まるで筆で描いたような線を生み出していくものです。切先が鑿のような形で、彫り線の片方を浅く、他方を深く彫り込んでいく技法です。絵画の付立画法の筆勢を鑿で表現するのに適しており、筆で言えば穂先になるところを深く、腹のところを浅く一気に彫っていきます。江戸時代中期の金工師 横谷宗珉(1670ー1733) の創始と言われ、幕末から明治にかけての加納夏雄はこの技法の名手でありました。
木彫の場合は木の目があるので、片切り彫りのようにするには少し勝手が違います。金槌を使ってタガネで切り込んでいくところを、一回小刀を入れてから、それをさらうようにして二回に分けて彫っていきます。
(←) 三角刀
鋭角な三角刀を使えば出来る部分もありますが、細かな曲線などは難しいです。
タガネを通すことによって片切り彫りということでしょうから、木彫では違うものかもしれませんが、木彫でもやってみたいものです。